第6章 母を探す旅
少年は長い旅に出ました。
数ヶ月の間、両親の手がかりを求めて旅を続けましたが、何も見つかりません。
疲れ果て、両親を見つける希望も薄れかけていたある日、奇妙な国にたどり着きました。
そこは石と岩と木々で埋め尽くされた国でした。
高い塔のある大きな宮殿が目に入り、その近くには庭師の小さな家がありました。
少年が辺りを見回していると、庭師の妻が彼に気づきました。
「まあ、可愛い坊や。こんな危険な場所によく来たわね」
少年は答えました。
「私は王子です。父と叔父たち、そして魔法使いに魔法をかけられた母を探しているのです」
庭師の妻は顔を曇らせ、こう告げました。
「この国と宮殿は、強大な魔法使いのもの。誰かが気に入らないと、石や木に変えてしまうの。周りに見える岩や木は、みんな生きた人間だったのよ」
そして続けました。
「しばらく前に、王子様が1人やって来て、その後に6人の兄弟が続いたわ。みんな石や木に変えられてしまったの。でもそれだけじゃないの」
「塔の中には美しい姫が囚われているの。魔法使いが結婚を迫っているけれど、姫は14年もの間拒み続けているわ」
少年の心が高鳴りました。
「これこそ私が探していた手がかりだ」
庭師の妻に事情を話すと、彼女は少年を助けることを約束しました。
「魔法使いに見つかったら危険だわ。私の娘のふりをしましょう。着替えはこれを使って」
そう言って女物の服を差し出しました。
少年は提案に従い、庭師の娘に化けることにしました。
数日後、魔法使いが庭を歩いているとき、少女に化けた少年を見つけました。
「お前は誰だ?」
「庭師の娘です」
魔法使いは満足げに頷きました。
「かわいい娘だな。明日、塔に住む美しい姫に花束を届けてくれないか」
少年は心の中で喜びました。
これこそ母に会えるチャンス。
庭師の妻と相談し、計画を練りました。
実は少年の指には、結婚式の日に父が母にプレゼントした指輪が、子供の頃からはめられていました。
叔母たちが大きくなった少年のために指輪を広げてくれたので、今でも身につけていられたのです。
庭師の妻はアドバイスしました。
「その指輪を花束に結びつけなさい。お母様はきっと気づいてくれるはず」
確かに難しい挑戦でした。
魔法使いか召使いが常に部屋にいて、姫を監視していたからです。
でも、ついにチャンスが訪れました。
誰も見ていない瞬間、少年は指輪を花束に結びつけ、母の足元に投げました。
指輪は床に当たって音を立て、バルナが音の正体を確かめようと目を向けると、花に結ばれた小さな指輪を見つけました。
すぐに指輪を見分けたバルナは、息子の語る長い探索の物語に耳を傾けました。
そして息子に懇願しました。
「どうか命を危険にさらさないで。でも...もし本当に私たちを助けたいのなら、まずは魔法使いの力の源を突き止めなければならないわ」
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原作:Joseph Jacobs and John Dickson Batten『Indian Fairy Tales』
出典:Project Gutenberg (www.gutenberg.org)
https://www.gutenberg.org/ebooks/7128